生涯の恋人 29話

ふく  2006-10-15投稿
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お守りを作った

母譲りで裁縫は得意だった

『クマ』の小さなお守り
黄色とピンクのクマを一つずつ作り黄色の方の裏には彼の名前・ピンクには私の名前を刺繍し二つをピッタリと縫いつけた
何故『クマ』かと言うと 彼の名前が『熊崎』だからだ
ただそれだけの理由だ


次の日の朝
忘れないよう手作りお守りをバッグのポケットに入れた

手作りの物を異性にあげたことはない
渡すタイミングも
渡す時の台詞
色々考えてみたが経験がない私は自然にまかせるしかないのだ

朝の登校で渡そうとは考えていたが
見事にタイミングを逃した


「最近、熊崎君とはどう?」

ヒロコは良く気にしてくれる

「どうって、まぁ仲良くやってるよ。」
「ねぇねぇ、もうキスした?」

好奇心も含まれているようだ

「いや…まだ何も…。」

「まだ!?遅いね〜!ってゆうか相変わらずだよね!」

『相変わらず』とは何だ

「別にいいの。」

何故みんな
『付き合う』=『キス』になるのだろうこの年頃は仕方ないのだろうか
周りにも同じようなことを良く聞かれる
彼は分からないが 私はそんなことは全く気にしていない
一緒に居て 話して 笑って 手を繋いで
それだけでも幸せすぎるくらい幸せなのだ
彼が喜んでくれたらそれでいい
彼が笑ってくれたらそれでいい
彼が幸せならそれでいい
純粋にそう思い
彼の為に何かしてあげたいと頑張っている自分が好きだったりする



「あのね、熊崎君にあげたい物があるんだ。」

帰り道
やっと彼に渡せた

彼がどんな反応を見せるのか ドキドキした

「何、これ?」

「お守り…のつもりなんだけど。昨日作ったんだ。」

「まじで作ったの?これを?可愛いね!ありがとう!」

男の人が持ち歩くには可愛すぎるくらいのお守りだったが
彼は喜んでくれた

「大切にするよ!」
「うん、大切にしてね。」

彼はしばらく手作りのお守りをニヤニヤしながら見ていた

「そんなに嬉しい?」

「うん、まじで嬉しい。」

そう言って笑って見せた
本当に嬉しそうだ

彼の喜ぶ顔が見たい
現実になった

彼の為に何かしてあげたい

その想いが伝わった
ほらね
私は彼が幸せならそれで十分幸せなんだ
こうやって彼が笑っていて隣に私が居る
これ以上
何を望むと言うのか

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