『ヤクシマ家か…あんな女の子も、殺人者として育てられるんだな…』耳元のイヤホンから聞こえた声に、女性は胸元のマイクで応じた。
「同情は禁物よ。理由がなんであれ、彼女はこの国に来てから…殺人を犯したんだから」
与弼によって海外に逃がされた杞李だったが、運が良かったのはそこまで。逃げた現地で追っ手に出会い、そこでまた、彼女は冷静さを失う。
『切羽詰ってたんだろうな。少人数とはいえ、一般人ごと、皆殺しだ』
女性は思い出す、杞李が呟いていたことを。
(大量殺人に認定されているのに、無差別殺人はしないんですね…)
少女の心中は、誰にも察することができなかった。何を思ってこの人ごみの中をさまよっているのか、これからどうしようとしているのか。誰にも推測できない。
「…彼女、もう巷じゃ[死神]ってすっかり有名になってる。きっとあのタツミ・ヤクシマが流した情報でしょうけど、野蛮なハンターの獲物になるのは間違いないわ」女性のいうハンター。犯罪者に近い考えの持ち主の集まり。しかし、罪は決して犯さない。自分の利益に為に動く、政府認定の犯罪者とでもいっておこう。
『なんで。まだヤクシマ家の情報は漏れてないはずだろ。オレ達が一番速く情報を手に入れたはずだ』聞こえた焦る声に、女性は溜息をもらした。
「バカね。私達よりも有能なハンターならつかんでいるはずでしょ。ほら。例えばサン・アルヴェラーナとか」男は真剣な声で言った。『都市伝説呼にされたあの変人か。あいつがつかんでるんじゃ、時間が勝負だな。下手すりゃ半殺しにされちまう』
「政府直属のハンターである私たちが受け取った任務は[キリ・ヤクシマを生きたまま日本に返すこと]――私達も気をつけましょ。アルヴェラーナも、見境ないから」そして彼女は歩き出した。→∞1にツヅク