貴博『ん…』
この馴染みが強く心地の良い感触…ベッドの上か。
博一『お、目が覚めたか』
博一?なんでお前が…?
目の前にはイスの上で足を組み、妙に偉そうな体勢で俺を見据える博一がいる。
ここは…俺の家…。
貴博『あれ?』
身を起こしてふと思う。
そもそもなんで俺はベッドの上にいるんだ?
確か…ストーカー野郎と緊張感溢れるバトルアクションを繰り広げた後…。
博一『驚いたぜ、お前が無防備な肢体を晒して校庭で寝息をたてていたんだから』
貴博『あぁ…』
そうか、俺は寝てしまったのか。
それをこいつが家まで運んでくれたと。
ん?まてよ?
貴博『何故お前があの場に現れたんだ?それに叶呼は?』
バカな事をしたかもしれない。
いくら自分が負傷していたとは言え、叶呼を一人で外に出させるのはいくらなんでも危険すぎだ。
博一『安心しろ。石倉さんは俺が責任を持って嫁にした』
貴博『悪いが今は冗談が通じん。正直に言わなきゃ本気で殺すぞ』
博一『ちっ…ノリが悪い…これだから日本人は…』
博一『石倉さんは家に送った、事情もその時に聞いたよ』
貴博『そうか…』
とりあえずは安心だな。
博一『まったく今時ストーカーとわな、ふざけた奴もいるもんだ』
お前もだろ…。
貴博『それで、なんでお前があの場にいたんだ?』
博一『話せば長くなるがな…』
博一『あれは五日前のことだった…』
貴博『待て』
俺はどこか遠くを見るような目をして語り出す博一の頭に蹴りを入れた。
博一『ぐはぁ!…てめぇ!何しやがる!折角俺のサスペンスとバイオレンスに彩られたハードボイルドな日常を語ろうと思っていたのに!』
貴博『誰がんなもん頼んだ。今日お前が叶呼に出会う三十分前あたりから話せ』