夏の面影はどこにもない。季節はもう秋だった。
僕と彼女は映画館を出て人通りの少ない道を歩いていた。
彼女とはどんなにつまらないことを話しても楽しかった。
時計の針が止まればいいのにと思った。
それは突然やってきた。
ドン!
背中から重い衝撃が伝わり、僕は転がった。
「いてて・・・」
起き上がり後ろを見ると軽自動車があった。
首を回転させると右側に彼女が倒れていた。
「だいじょ・・・」
彼女の手は冷たかった。口からは赤い液体が流れている。
「ウソだろ・・・」
彼女は目を開けなかった。遠くからサイレンの音が聞こえる。
彼女の頬に水が落ちる。僕の涙だった。
彼女は死んだ。
ただの交通事故と新聞に載った。
しかし一週間後、僕に奇妙なことがおきる。
つづく(はず)