「所詮ゼウスのしもべ、我々の敵ではない、なあ?木柳 江美よ。」
木の上から矢沖と小百合に襲われ逃げる、青年木柳 雪を傍観する男女、黒髪の女はマントを頭まで羽織った男に木柳 江美と呼ばれている。
「そうね、だけど油断は禁物だわ。ゼウスの恩恵だけでなく、他の力があるかも知れない。あなたのようにね。」
マントの中に閉じこもる男は、表情を見せずに不気味に笑う。
「……」
「さあ、行きましょ。雪を守らないと。」
矢沖達が車で走り去るのを見届けた二人は、静かに木の上から飛び下る。江美は携帯を取りだし、仲間の一人にかける。
「今いなくなったわ、木柳 雪は逃げたは、後は貴方達に任せるわ。」 相手の返事を待たずに江美は携帯を切る。
「さあ、行きましょ。」
「待て。」
男は歩き出した江美を呼び止める。
「お前は、我々の力を共有しているが、お前の弟もそうだと言う保証はない。」
「何がいいたいの?」
江美の体を覆うように闇が蠢き、江美は男を睨み付ける。
「雪は私と同じ力を持っているわ、覚醒すればわかるわ。」
「もし違っていたらどうする?」
男の体にも闇が纏われ蠢き回り、江美を威嚇するように大きくなったり小さくなったりする。
「その時は私が……消すわ。」
「出来るのか?」 張り詰めるような空気が辺りに立ち込める。
「……できるわ。」
「ならいい。」
男を纏う闇が消え、男は音をたてずに歩き出す。
江美も闇を消し男について歩き出す。