タカは坊主頭をなで回した。
「…なに言ってんだよ」
俺は聞き返すことすらままならなかった。ただ、タカが発した言葉を否定することしかできない。
「マジなんだよ」
俺は落とした菓子パンの事を横目にみながら、思考回路を必死に修正した。タカは俺とは違って人を愛せる男だ。付き合いはじめて3ヶ月ぐらいか。
「あぁ……なんつうか」
タカは座り込んだままパンの袋を開けた。
「おめでたいこと……だよな??」
「わかんねぇ」
タカはパンにかじりつきながら答えた。
「ただ言えることは、これで何もないのはおかしいってことだ」
俺は少しばかりいろんなことを考えた。タカは彼女を愛している。聞いた話、彼女のほうもらしい。
「人生の分岐点だよ」
俺は思考回路がやっとのことで編み出した結論を報告した。
「確かに、これで何もないのはおかしい。しかしな、これはタカの人間像が浮き彫りになり得ないっつう事だ」
タカは口一杯にパンを詰め込んで小刻みにうなずいている。
「これで何かあってしまっては、噂が一気に広がってタカの評価が上がるか………下がるか」
なに言ってんだ俺は……まぁつまり、だ。
「やりすぎるなっつう事だよ」
タカはニッコリ笑って見せた。