幸運の女神-第二部 20

朝倉令  2006-10-20投稿
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麻紀とバトンタッチした恵利花がコルスに戻ってから、数日経った頃。



「みんな、お疲れさまー」


ラストオーダーをこなした後、歩きづめの信一達に俺はねぎらいの言葉をかけていた。


「ねぇ、…ちょっと話があるけど、いい?」



ロッカールームへ向かう途中、エリカが背伸びする様な仕草で耳打ちしてきた。



「じゃ、お前先に車乗ってろよ。 俺、集計が残ってるから…」


「あら、私が済ませておくわよ。
彼女、何か込み入った話がありそうじゃない?」


「オーナー! いついらしたんですか…?」


「そんな事より、早く着替えてらっしゃい」

「済みません、…お言葉に甘えさせて頂きます」



渡りに船、とばかり後を手島美和に託し、俺は着替えると真っすぐ駐車場へ向かった。





「リョージ、あのね……」


「どうした?やけにモジモジしてんじゃん。

もしかして、……で、出来ちゃった…のか?」

「も〜…違うよ、エッチ!」

「何赤くなってんだよ」


「バカ… あのね、ウチの学校にエミリさん来たんよ」

「エミリだァ? 桜木か」

「うん、…あたしに、モデルやらないか、だって」


「で、どうする?」


「嫌。
だって、…リョージとこうして逢えなくなるもん」



子猫の様にギュッとしがみ付きながら言い募るエリカ。


俺は彼女の髪をそっと撫でてあげた。



「それと…」

「何だ?」

「女優の井沢美紀とか久野ゆかりまで、あたしの顔見に来たよ?」


「お…お前、アイツらから話を……」

「聞いちゃった〜っ♪」



全員、俺、倉沢諒司の元カノ…である。



「でねぇ、この間の霧島さんが、何か裏で手を回してるんだって教えてくれたんよ」


「そうか…。
やっぱ、あのオヤジ何か企んでやがったか……。

あれ? …何笑ってんだよエリカ」


「むふっ♪〈達人〉の口説き方じっくり聞いちゃったしぃ〜」

「コラッ!おめーわっ!」






ちょうどその頃、ラットラーの取材記事の載ったサウンドライフが発売され、思わぬ話題となっていたのである。





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