不思議であること?

χ  2006-10-20投稿
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俺には、不思議な友人がいる。彼は有馬[ありま]という現在17歳の少年。
彼を知る者で彼を[天才]と思わないヤツは少ない。いや、変人とも言える。

彼は中学生活が始まって間もなく、一歳年上の兄を事故で亡くした。唐突な出来事…
早すぎる兄の死を最も悲しんだのは彼等の母親であった。
母は葬儀の夜、棺にすがり、この世の終わりであるかのように泣き叫んだらしい。葬儀に参列した俺の仲間の親の間では有名な話で、
有馬の母は悲しみのあまりか、棺を開き、動くことは無い、我が子を抱きしめ、気絶したという話がある。参列者は、母親に有馬が近づくことはよくないと考え、別室へほぼ、軟禁状態にした。確かにあまり見せたい状況であったには違いない。
やがて、本当の別れが訪れ、まさに、母がもう息子に触れることは二度となくなった。愛別離苦というものだろうか…現世から天へ向かう我が子を見つける母親の姿、また、亡くしたことに誰もが涙した。
そんな悲しい別れがあり、母親も間もなく体調を崩した。49日がくる前には救急車で搬送される状態になった。やがて、母親にも死神の啓示か…重体、危篤と命の危機が訪れる。
有馬は家族に関心がなかったようだが、失って初めて家庭の暖かさを知った。兄が亡くなる前に父と母は離婚していた。葬儀からは、父が戻り母が病床生活になると父も幾度となく涙を流した。有馬はたくさんの涙を見た。これほどまでに、自分の周りから人々がいなくなってよいものか…幸せは皆、平等に訪れるなどとほざいたヤツは誰だ?何一つ、信じたくない。やがて、すべてに憎しみを覚え、何もかもを信じたくなくなった。
父は俺を捨てた。
母は俺を忘れて意識はなく
兄も消えた。

孤独な生活だった。中学生活などまともに訪れるはずもなく、豪邸に一人、何も考えずに過ごした。



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