目の前に現れた白藍の弟〈黄藍〉は冷ややかな笑みを浮かべ、見下すように私を見ていた。
顔は白藍と同じなのに雰囲気は全然違った。
まるで陰陽。
それはどちらも欠かせない二つで一つ。
「朱斐、ごめん。こいつ連れて帰らんとあかんねん。ほんまゴメン」
白藍はひたすら謝り、今度改めて紹介すると言って、弟・黄藍と帰って行った。
キョトンとしながら朱斐は二人を見送る。
「──……何で…」
キスされそうになったのかしら?
朱斐がグルグル頭の中で疑問を巡らせ混乱している。
その状態のまま数分経った。
「朱斐」
「聖夜!」
迎えに来た聖夜に向かって朱斐が駆け寄る。白藍に送る時間が無かった為、朱斐の家の者、聖夜が迎えに来た。
「聖夜、ごめんなさい。わざわざ…」
「──いいや、これも付き人の役目だ」
「?──」
聖夜の様子が変。
そう感じながらも何がどこが変なのか分からない朱斐は、何も言えない。
「せ・聖夜!」
「──何?」
「あっうっその……と・桃実さん……元気だった?」
朱斐が不意についた桃実の名。
一瞬、聖夜の顔が歪み、すぐに笑顔になった。
作り笑顔に…
「あぁ、元気だったよ」
「……聖…夜…?」
朱斐はわけが分からず、戸惑うばかり。
そんな朱斐に気付き、聖夜は朱斐の頭をなでる。
「お前が気にする事じゃない。何でも無いよ」
偽りの言葉、優しい気遣い、作り笑顔。
胸が痛い。
自分は何の役にもたたない。
「聖夜、早く帰りましょう」
「あぁ」
せめて私は笑っていよう。何も出来ないけれど──でも聖夜の隣にいる時は笑顔を向けてあげる。
私の事まで気遣わないように──
「あのな〜いきなり何でくるねん!アホ」
「下品な言葉使いは止めなさい」
車。同じ顔の双子が言い争っている。
「そんなんどうでもエエやろ!それより返事言えや」
「見たかったから……だ。お前の婚約者」
「それで何でキスしよう思ったんや」
「あの馬鹿な女が俺を白藍と呼んだから」
「あのな〜双子言うてないんやから間違うわ!」
「いいのか?それで……」
「何がや?」
「──ガキ」
「ハッ!!?おま…エエかげんにせぇよ!ボケ!」