あなたの願いを手助けするだから──
叶えて
私の願いを──
いきなりの急展開。
戈月は警戒している。この姫は何を知っている? 危険分子か?
頭の中で自問自答が駆け巡り、警戒は強くます一方。
「──俺の願い? あなたに分かるのですか?」
「分かりますよ。私は〈全て〉が分かるのです」
全て?
世界は見えないのに全てが分かる?
ありえない!張ったりか、調べたか…
「あなたの願いとは? 俺の願いは手助けなのに、あなたの願いは叶えろと?」
「ええ──その通りです。私の願いは──」
「願いは?」
姫はうつ向き、見えない空を見上げた。
戈月には無表情の姫の表情が一瞬、悲しそうにしているように見えた。
「いずれ──いずれ分かります。戈月」
「?あなたは……一体」
夢姫は無表情のまま、塔の中に入って行った。
戈月が追い掛ける。
「ま・待って下さい!」
「ここには一日三度、食事を運びに来て下さる方が簡単な掃除をして下さる以外、人は滅多に来ません」
「嘘……ですね」
「何故?」
「茶器──コップが多すぎる。礼儀として茶をもてなす為に必要なのでは? それに人が来ない割に人間臭い」
「さすがですね。コップは父とその側近の方の為に出すのに必要だからです」
「飲みは──しないでしょうに」
姫は否定も肯定もせず、無言。
戈月はそんな姫に追求せず、窓や部屋の間取りを確認している。
三階建ての塔、一階は窓に鉄格子がついている。
「何故──これでは本当に牢みたいでは無いですか」
「──年に一度、この国の生誕際があるのですが……決まってその日はこの塔に──」
戈月の顔が嫌悪で歪む。ガンッと鉄格子を殴る。
「生誕際に独り閉じ込められている? あなたは何故──」
「私は不吉な予言も言います。この国に災いになる言葉を吐きます」
「ッ──それはあなたのせいでは無いでしょ!!」
戈月が声を張り上げ怒りを露にする。
夢姫は黙って戈月の言葉を訊く。無心。
「──……人形姫と呼ばれて……あなた平気ですか?」
「分からないのです。感情とは何でしょう?嬉しいとは悲しいとは──どんな気持ち?」
夢姫は無表情。
「私には分からないのです。永久に」