嫌な朝だった。空気は重く沈んでいる。
そんな気分を追い払うように、足を靴につっこんだ。
昨日、おばあちゃんが死んだ。
教室に飛び込んできた先生が
「中野、おばあさんが病院にはこばれた。早く行ってあげなさい。」
そう言われた瞬間、息がとまりそうになった。
病院に着くと、おばあちゃんは冷たくなっていた。
はぁー
思い出すとため息が出る。
無意識のうちにうつむいていた私に、突然前方から声がかかった。
「美樹、なにを探してるんだい?」
びっくりして顔をあげた。それはまぎれもなく、おばあちゃんの声だったから。
でも、前方には誰も居なかった。
「おばあちゃん!?」
辺りを見回すと、そこにはかんざしが落ちていた。
近寄って、手にのせて見ると「ノギコ」と、おばあちゃんの名が彫られていた。
手をあげて、太陽の光にかざすと
きらきらと輝いて、あの大好きな笑顔が
「泣いてたらおばあちゃん、安心して行けんろう?」
と、言っているようで、涙を拭って「うん!」と元気に答えた。