カランッ♪店の扉が開き取り付けてある鈴が鳴った。「いらっしゃいませ〜」元気に声をかけたのは店長の七倉朝美だ。朝美は32歳。色白で上品な顔立ちと裏腹にホイットニーヒューストンを思わせるほど豪快なパーマをかけている。店に来たお客は99%が驚いて二度見する。しかし朝美は明るく人懐っこい性格で店を始めて三ヶ月だが、ずいぶんと常連客ができた。店に置いてある物のテーマは全て「恋愛したくなる物」何でもない普通のガラスのコップも底を覗くと可愛い天使がハートを抱きしめて笑っている彫刻が施してある。すごくキレイな虹色のマフラーも延ばして見るとかなり長く二人で巻ける長さだったりする。…そんな訳で店のお客は高校生からOLくらいの女性がほとんどだった。常連客は恋愛で心が揺れた時この店に来て品物を選んだり朝美に相談したりした。朝美と話すととても前向きな気持ちになれると評判で店を出る女性は皆とてもステキな笑顔だった。朝美もその笑顔が見たくてこの店を始めたのだ。
ある日この店には珍しくサラリーマンらしい30歳くらいの男性が店に来た。朝美はいつもの様に笑顔で挨拶した。男性は品物を1時間かけてじっくり見て回りタバコの大きさほどのハート型オルゴールを手にレジへと来た。「プレゼントですか?」朝美が尋ねると男性は少し困った顔をして「はい」と言った。朝美はキレイなレースリボンを五種類使い可愛いラッピングをした。会計が済み男性が朝美に何か言おうとした瞬間「カランッ♪」店の扉が開き女性二人のお客が入って来た。外は雨が降り出したらしく二人の肩は濡れていた。朝美は急いで奥からタオルを持ってきてお客に渡した。「ありがとうございます!」二人は朝美にお礼を言った。「カランッ♪」扉の方を見るとさっきの男性が店を出ようとしていた。「傘をお貸ししましょうか?」朝美の声と同時に男性は出ていってしまった。
数日後またあのサラリーマンの男性が店に来た。男性は品物を見る様子もなくレジへと来た。朝美が不思議そうな顔をしていると男性が鞄からヨレヨレのリボンで不格好にラッピングした物を取り出した。「これをあなたに」男性が朝美に差し出した。「このラッピング…」朝美が取り出した物はあの時のオルゴールだった。蓋を開けると「星に願いを」の音色と小さな星が付いたネックレスが出てきた。「ネックレスを入れて元通りにラッピングしようとしたんだけど…」