心宿る月4

龍王  2006-10-23投稿
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 狭き塔に閉じ込められている〈人形姫〉と呼ばれる王女。
 艶やかな黒髪は存在を際立て、透ける色白さは儚く美しく、端正な顔に合間ってその存在全てが奇跡のよう──



 離塔。

「──……盲目なのに杖も無く、つまづかず、迷わずよく歩けますね?」
「ここを使って下さい。この部屋はこの前、あなたの為に掃除しましたから」

 夢姫がそう言いながら部屋の窓を開ける。一兵士には不相応な部屋。備品も部屋の広さも。

「──あなたの部屋は? 姫様」

「私の部屋はありません。と言うより私には必要ありません」
「どう言う……」

「寝ないのですよ。私は生まれてから一度も眠りについた事が無い」
「え!?」

 夢姫は花瓶の花に触れる。

「花は……綺麗なのでしょう? 戈月あなたの目の前にいるのは〈人形〉です」

「──……人間です。姫は──俺と同じ人間です」

 戈月は、目の前の不可思議な姫を見つめる。
 人間だけど、人間と違って、まるでその存在は──

「神」
「えっ?」
「あなたは神のようですね。姿は美しく盲目だけれど全てが分かる」

 夢姫はビックリしているのか口を開けたまま、固まっている。

「あの……」
「戈月は……不思議……ですね」

 不思議たくさんの夢姫に不思議、と言われ戈月は苦笑いを浮かべる。

「──……俺はあなたの護衛です」
「はい?」
「それを──許して頂けますか?」
「──私を守ってくれますか?」

 変わらない無表情、けど声は不安気だった。
 戈月はふわっと笑い、夢姫の手をとった。

「あなたに忠誠を──夢姫」

 触れるか触れないかの手の甲への口付け。一枚の絵画のように綺麗な光景。
 金髪の異国の謎王子と、神のような存在の黒髪の王女。

「──……その言葉を嬉しく思います。戈月」



 戈月は自分の素性を知っている危険な〈夢姫〉を護ると忠誠を誓った。
 会って間も無く、忠誠を誓う程の絆も無い。

 でも戈月は〈護〉りたいと強く想った。



「これからは俺がいつもあなたの側に……夢姫」



 〈人形姫〉とあだ名されている夢姫は、肩を震わせる、か弱い少女だったから──

 未来を見通せても自身はただの非力な少女

戈月は夢姫に忠誠を誓う──



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