「けっこうチャリこいできたけど…まだ着かへんの?むっちゃ田舎やん」
街はとっくに通り過ぎ、見知らぬ風景があたりに広がっている。
夏の日差しが肌をじりじりと焦がした。
「こういうとこの空気もたまには吸わなあかんねん」道路がすっと伸びていて、その脇には川が気持ちよく流れていた。
「あっ」我々は少し先にコンビニを見つける。
「そういえばまだ何も食べてへんかったな。寄ってこか」
店内のクーラーが異様に心地良かったのを覚えている。
我々はそれぞれに食品を物色した。
「なぁ。あとどれぐらいで着くん?」日が暮れる前に帰れるか不安だった。
「あと少しで着くがな」
チャリをこぎながら我々はだらだらと菓子パンをほおばる。
学校の先生が見たら注意をするだろうか。
そんなこと気にもとめない様子で友三は飲みものを取り出す。
「何なんそれ?綺麗な色しとんな」
「メロンボールっていうねや」
「ウマそうやん。俺にもちょっとちょうだいや」
口に含んだ瞬間、私は違和感を覚える。
「ン…?」
友三がけたけた笑いながらいう。
「それカクテルや。お酒やっちゅうねん」
「お、お前なぁ…」気付くと私も笑っていた。
悪くないと思った。
カクテルの味がどうこうではなく、何かこう、全体的なことについて。
夏の気怠く切ない空気も手伝い、私はふと塩田さんのことを思い出す。
同じく塩田さんに想いを寄せる悪友の顔も浮かぶ。
それをしっかりと振り払った。
「そういや友三よ」私は訊いてみた。
「塩田さんは?」
「あぁ…ちょっと待って。電話してみる」
程無く我々は公衆電話に立ち寄った。
続く