15歳のデイトリッパー?

けん  2006-10-23投稿
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「えっ…あっ、はい。そうですか…」

電話口からもちろん向こうの声は聞こえない。
ただただ私は、不吉な予感を抱いていた。
まもなく友三がこちらに近付いてくる。

「さて、残念なお知らせがあります」
さほど残念そうな顔はしていない。
「塩田さん、来れへんってよ」

私は少なからず落胆した。しかし不思議と心は折れなかった。

何より、私はこの小旅行が少し気に入っていたのだ。
仮に帰ろうとしても、友三はそのまま私一人を帰らすことだろう。そういうやつだ。
方向音痴はこういう時につらい。

「まぁ長かったこの旅も、もうすぐゴールやしな」
友三が私を慰める。

乗りかけた舟だ。

私はそう考えることにし、それからの機動力とした。

それからの旅は更に過酷を極めた。

チャリをこげどもこげども、目的地に着かないのだ。

「おい友三、いつになったら着くねや!」
と訊いてみても、

「頑張れ、ほんまにあと少しやから!」
と返されるばかりだった。

途中それでも希望の光のようなものがあった。

軽い山道を越えたあたりから、私の見覚えのある風景が広がりだしたのだ。

たしかこの辺に母方のばあちゃんちがあったっけ。
だとすると…児童公園の巨大アスレチック。その周辺には魚が釣れそうな池もあるな。

私の推理は全くの無駄だった。
友三は涼しい顔でそれらをどんどん通過していく。

空はオレンジ色に染まり、辺りには鬱りが見えはじめた。

チャリは進めど、周りのものはどんどんその色合いを沈めていく。

そして辺りが夕闇にさらわれた頃、友三がいきなり大声を出す。

「ここや。着いたわ!!」



続く

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