小さな家。けど暖かい。この家は〈黄藍〉の母親の家だった。
「この話はまだ続きがある」
「……」
ブチッと黄藍が芝生の草を千切る。
「白藍の父親は、自殺した白藍の母親の身代わりに、〈双子〉だった俺の母親を利用した」
「!!?」
「白藍の母親は自殺。けど表向きは、双子の妹であった俺の母親が自殺した事になってる。
そして俺の母親は今は白藍の父親の妻だ」
「そんな……事」
「社会的に妻自殺は印象が悪く、妻の妹が自殺なら皆同情するさ」
「黄藍は……何でそれを…しってるの」
ブチッと草が千切る音が響く。
黄藍から憎悪のオーラ溢れにじみ出ていた。
「──白藍が……いなければあんな男……すぐに殺してやるのに」
「黄藍」
涼やか風、閑な庭、暖かい雰囲気の家。
本当なら黄藍はここで母親とゆっくり過ごしていたはず。
「──……俺が言いたかったのはあなたは目障り、白藍には似合わないと言う事です」
「──……だけど婚約は……私の意思では無く父が──」
朱斐がだまりこむ。
「──駒…ですからね。お互い」
冷静を取り戻した黄藍はさっきよりは大分マシな口調と態度になっている。
「白藍から……婚約破棄できないかしら?」
「無理です。白藍は重要な立場。それをよく知っているし逆らえば殺される」
「冗談…」
「死んだ姉の身代わりに双子の妹を利用する家ですから」
朱斐がタラッと冷や汗を垂らす。
破談にならなければそんな家に嫁がないといけない。
「セイヤに助けてもらえば?」
「えっ?! あっうっそれは出来ない。聖夜……彼女いるから」
「奪えよ」
「無理」
「ウザイ女」
「悪かったわね」
沈黙。
黄藍の性格になれたのか朱斐が笑いを溢す。
「ふふっ」
「何がおかしい?」
「いえ、私でも喧嘩できるんだなって」
「喧嘩?」
「こっちの話です」
「また襲われたいのか?」
「また泣きわめいて欲しいですか?」
負けず劣らず朱斐も言い返し、互いに睨み合う。
「性格悪い女」
「あなたには負けるわ。黄藍」
「ハァ、ますます白藍の嫁にはふさわしく無い」
「うっ、それは…その通りです」
「フッ」
黄藍が素の笑いを溢した。
「おかしな女だ」