僕が小学生の頃、学校にある側溝、つまり雨水が流れるところにいくつか蓋が無い所がありました。
今はたいてい蓋がしまっているのですが、それにはわけがあるんです。
僕の小学校はあまり水はけが良くないらしく、グラウンド周り、クラブ室の前などは側溝で囲まれていました。
事件の起きた日の前日は雨が多量に降って側溝の中は泥でいっぱいなっていました。と言っても10cmくらいでしょうか。小学生でもスネまでしか埋まらないくらいの深さです。
グラウンドは乾いていたので昼休みに皆でドッヂボールをしていたんです。昔は男女入り交じって遊んでいましたので、その日も女の子も一緒に遊んでいました。
そしてある時、力の強い男子が投げたボールが外野の頭上を越えていってしまいました。それを一人の女子が追いかけます。
するとその女子は勢い余って転んでしまいました。皆が「あーぁ…」と思い、駆け寄ろうとしたその時でした。
転んだ女子の目の前にあった蓋のない側溝から泥だらけの腕が出てきたのです。そしてその腕は転んでいた女子の首を掴みました。
「ぅぐぇっ!!!!」
酷い叫びと同時に、女の子の体は側溝へ吸い込まれていきました。皆突然のことに呆然としていましたが、僕はその子のことが好きだったので側溝へと駆け寄りました。しかし、そこにはただの泥があるだけでした。手を突っ込んでもぐちゃぐちゃとした泥の感触しかありません。
そのことを皆で先生に言いましたが誰も信じてはくれませんでした。
それから一か月経った日、屋上の雨水タンクの点検に来た業者が雨水タンクから溺死した女の子を見つけました。
それは連れ去られた女の子でした。
そして水底から白骨化した女の子の死体が見つかったそうです。何故かその手は女の子の首を掴んでいたそうです。
それ以来、僕は高校生になった今でも怖くて側溝に近付けずにいます。
※この話はフィクションです。