たどり着いた場所は友三のおばあちゃんちだった。
玄関まで行くとおじいちゃんが出迎えてくれた。
「よう来たのぉ」
親戚をはじめ、友三の来訪を楽しみにしていたらしい人々が顔をだす。
「あら友三ちゃん!久しぶりやねぇ」
「おぉ友三か。遠いところまでご苦労やったな」
話によると、友三は度々ここに来ているらしい。
もちろんチャリで。
「面白いところって…お前のおばあちゃんち?」
私はおそるおそる訊いてみた。
「そうやでぇ」
友三はここへきて明らかに嬉しそうな顔をしている。
許してやろうと思った。
結局だまされてしまったことも、無駄に釣竿を持たされたことも。
「今夜は焼肉パーティーするらしいわ。さ、部屋にいこか」
私はふと時計を見た。もうこんな時間か。
「ちょっと電話入れてくる。親に」
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夕食の席はまさに盛大なパーティーだった。
人数が多かったせいもあるが、皆、とにかく明るいのだ。
宴の熱気もまだ冷めやらぬまま、私と友三は部屋に戻ってきた。
「ここってお前の部屋?えらいシブいやん」
黒い机に白いカーテン。本棚には古い書籍が詰まっていた。
「おかんの部屋やねん」
「ふぅん…」
私は部屋の中を改めて見た。
絨毯が花柄であることに気付く。
「おかんはもうおらんけどな」
「えっ…」
「俺が小さい頃に重い病気にかかってもうてな。最悪やろ?」
友三はぎこちない笑顔を浮かべた。
「そうか…」
気の利いた言葉が出てこなかった。
自分を情けなく思う。
たしかに思いあたるふしはあった。
友三の家には何度も遊びに行っているが、おかんを見掛けたことは一度もないのだ。
「まーまーまーまー、それはそれでええとしてな。明日は朝早いぞ」
友三が布団をかかえながらいう。
「おいおい明日は日曜ですよ。ゆっくり眠らせろや!他人の家やけど」
冗談まじりの抗議をしてみた。
「ずうずうしいやつやな!明日、6時起きやから。ちゃんと起きろよっ」
友三が少し笑顔を取り戻したような気がした。
続く