薄暗い部屋、人の気配の無い旅館、窓の外に広がる漆黒の森。すべてが俺を不安にさせた。
「ガチャ」
いきなり部屋の扉が開いた。俺と翔は驚いて振り返った。
梢「あ、ちょっとビビってる!」
俺たちが振り向いた先、扉の前には、ちょっと満足げな表情の梢が立っていた。ほっとした反面、かなり恥ずかしかった。
翔「べ…別にビビってねぇよ!ただ…その…びっくりしてただけ…だ…。」
梢「それをビビってるって言うんじゃない?」
俺たちは反論の言葉すら浮かばなかった。
梢「そんなことよりさ!これからこの『秋陣村(じゅうじんむら)』の探検行かない?」
お前は好奇心旺盛な小学生か?と言いたくなったが我慢した。
翔「今はまだ3時だしな。暇潰しにはなるだろ。」
亮「…しかたないな。晩飯までには帰って来い。それまで自由行動。以上、解散!!」
俺は自分で言ったのだか、修学旅行に来たときの担任のノリに思えてならなかった。
梢「いよっしゃぁ!!!んじゃいってきま〜す!!」
梢が漫画ばりの砂煙をたてて部屋から出ていった。
翔「…やれやれだな。俺もその辺散歩して来るわ。」
翔も部屋を出ていった。俺は一人、部屋に取り残された。テレビでも見ようかとリモコンを探したが、テレビすらないことに気がついた。諦めて部屋に寝転がる。倒れた瞬間に、大量のほこりが宙を舞った。天井に、大きなシミを見つけた。それが人の顔にも見えて、すごく気味が悪かった。
亮「…俺も行くか。」
俺は立上がり、服に付いたほこりを払って部屋を出た。
天井のシミは笑っていた。