天使のすむみずうみ83

雪美  2006-10-28投稿
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 香里は水分もなかなか飲み込めず、点滴に頼り、酸素マスクが外せない日が続いて、一週間になり、翌日は卒業式を控えていた。一樹は迷っていた、香里を一人にすれば、もしかしてその間に亡くなってしまう可能性がある。しかし、担任からは一樹は卒業生代表の式辞を頼まれていて、行かないわけにも行かない。しかし香里のことを思うと、このまま行けなくて、優柔不断に悩み続けていた。
そこで、その悩みを、一樹は岬と桜井にメールした。
二人とも来たほうが言いというが、俺自身は揺れていた。なぜなら香里は一樹に看取りを頼みたいと言い、看取ると約束したのだから・・・・・

 どうしたらいいのかわからないまま、夜が明けてもまだ決断できないままだった。
自分自身がこんなにも優柔不断だとはしらなかった。
香里には言えなくて、点滴針の痕の赤紫になっている部分が何箇所もある手を握りながら、まだ悩んでいた。
卒業式に行けば確かに学園の皆が期待するものが出来る自信はあるが、それでいいのか、それとも看取りを優先するのか、そんな自分に嫌気がさした頃、日が昇り卒業式に行く直前の7:00になったことを柱時計がボーンボーンと知らせていた。
すると、部屋に桜井が急ぎ足で息を切らせて入ってきた。
「香里さん具合悪いのか?」
「そうなんだ、桜井、今日の代表の式辞代役を頼めないかなー、お前なら代わりが立派に勤まるし皆も納得するかもしれないから・・・・」
そんな弱気な俺を
「バカやろうー皆お前のかっこいい登場を待ってるに決まってるだろう、なに言ってんだよー女子なんか王子様と呼ぶんだぞ〜代わりなんかいないんだよ。スーパースターの宿命だ、腹をくくれよ一樹、そういう理由なら香里さんだってわかってくれるさ・・・・」
桜井は式に出なきゃダメだと言い切った。

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