「─せない…か…せない─……」
「え…?」
下を向いて何か言っているが良く聞き取れない…
「行かせない…行かせない…あぁ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう叫ぶと、そのまま凄まじい速さでこちらへ向かって走って来た
『なっ…何!?…はっ…早くこの夢覚めて!!早く覚めてよ!!』
私は必死に逃げた
初めての出来事に頭が混乱していた
────────。
ガシッ!!
「…ひぃっ!!」
捕まるまでにそう時間はかからなかった
私の腕を強く掴む子供…
「…私…ちゃんとイィ子にしてたよ?…イィ子にしなさいっていつもママが言ってたもん…」
走ったせいで子供がいつもかぶっていた帽子が取れ、顔があらわになっている…見ると目は二重で可愛いらしい顔をしている…目をウルウルさせ今にも泣き出しそうだった
───『ママが?…あぁ…この子はまだ小さい時に死んだんだ…きっと親に"イィ子にしろ"…って言われ続けて育ってきたのだろう…だから死んでからも願いを叶えるという形で自分がイィ子だとアピールしていたんだ………』
「…ごめんね…でも…もぅバイバイね…」
私は泣き出しそうなその子の頭を優しく撫でてあげた
じゅうぶんイィ子だよ…だからもぅ成仏していいんだよ…という気持ちを込めて……───。