「ずっと君を見てた。愛してる、愛里…──。」
それを聞いた彼女が、僕の腕の中で一瞬固まったのが判った。そして僕はゆっくりと腕の中の彼女を見下ろした。同時に、彼女も腕の中から僕を見上げた。
すると彼女は頬を少し赤く染めて、「…ホントに?」と可愛く聞いてきたんだ。
だから僕は、「ホントだよ。」と優しく囁き、ついでに、「僕は睨んでたわけじゃないよ。あれは愛里のことばかり考えていたから…。僕、考え事すると表情が怖くなるみたいなんだ。」と、しっかり誤解も解いた。
すると愛里が急にクスッと笑い、「なぁんだ…じゃあ私、一年も無駄な時間を過ごしちゃったんだね。」と言うと、突然僕の唇に自分の唇を重ねてきた。そしてようやく唇が離れると、舌をペロッと出し、「これから、片想いだった一年間分も含めて、沢山イイコトしようね!」と悪戯っぽく笑いかけ、僕にそう言った。
僕はあまりの出来事に、頭がクラクラした。嬉しさのあまり、愛しい彼女をますますギュッと抱き締めた。
するといつの間にいたのか、後ろから突然悠介が、「お熱いね〜!若い二人は!おい、お前ら!くっついたのは俺のお陰なんだからな!感謝しろよ!あ〜あ、廊下で堂々イチャつくバカップルの誕生だ!」と言って囃したててきた。
そこで僕らは初めて、そこが学校の廊下だということを思いだし、思わず赤面してしまった。
よく見ると、廊下にいる人はおろか、教室の窓から身を乗り出して見物している人までいる。
だからとりあえず僕は彼女を腕の中から解放し、彼女に向きあうように立った。そして、彼女に恋して以来、一番言いたかった言葉を、僕は言った。…ついに、言えたんだ。
「おはよう、愛里。これからよろしく──…。」
その瞬間、周りから拍手や歓声が沸き起こり、彼女がそれに応えるように眩しく笑ってこう言った。
「おはよう…秋人。こちらこそ。」