翌年の春、私は志望校に合格した。
掲示板に自分の番号を見つけた瞬間、体中が震え上がったものだ。
親はもちろん、近所のおばちゃんまでもが大いに祝福してくれた。
それから私は、中学の担任だった先生に電話をかける。
「よく頑張ったねぇ。あなたの学力からすると、ほんま五分五分の勝負やったんよ」
自分は本当に頑張ったのだと、私はその時に実感した。
それから私は、思いきって訊いてみる。
「先生、友三はどうなった?友三の進路は?」
「そのことなんやけどね…」先生が声をひそめる。
私はごくりと息を呑んだ。
「彼も合格したんよ!私立の高校にね」
これで良かったのだと思う。
いや、良かったに違いない。
私はあの日以来、友三には一切会わなかった。
そのことはなおさら彼を傷付けたかもしれない。
それでも同じように言ってくれただろうか。
お前は悪くない。
これで良かったのだ、と。
通りの風がまだほんの少しだけ肌寒い。
私は窓を閉めた。
ふと、窓ごしに一本の木を確認する。
もうずっと長い間眺めてきた桜の木だ。
もうじき桜が咲き乱れ、夏にはいつかの蝉も鳴き出すことだろう。
――あいつ、元気でやってるのかな。
『暇つぶしの友達が本当の友達である』
誰かがそう言っていた気がする。
私は友三の家に電話をかけてみた。
3コールほど鳴って、電話がつながる。
ぶっきらぼうな声が耳に懐かしく響いてきた。