15歳のデイトリッパー【後日談・後編】

けん  2006-10-31投稿
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翌年の春、私は志望校に合格した。

掲示板に自分の番号を見つけた瞬間、体中が震え上がったものだ。

親はもちろん、近所のおばちゃんまでもが大いに祝福してくれた。
それから私は、中学の担任だった先生に電話をかける。

「よく頑張ったねぇ。あなたの学力からすると、ほんま五分五分の勝負やったんよ」

自分は本当に頑張ったのだと、私はその時に実感した。
それから私は、思いきって訊いてみる。
「先生、友三はどうなった?友三の進路は?」

「そのことなんやけどね…」先生が声をひそめる。
私はごくりと息を呑んだ。

「彼も合格したんよ!私立の高校にね」


これで良かったのだと思う。
いや、良かったに違いない。

私はあの日以来、友三には一切会わなかった。
そのことはなおさら彼を傷付けたかもしれない。

それでも同じように言ってくれただろうか。

お前は悪くない。
これで良かったのだ、と。


通りの風がまだほんの少しだけ肌寒い。
私は窓を閉めた。

ふと、窓ごしに一本の木を確認する。
もうずっと長い間眺めてきた桜の木だ。

もうじき桜が咲き乱れ、夏にはいつかの蝉も鳴き出すことだろう。

――あいつ、元気でやってるのかな。

『暇つぶしの友達が本当の友達である』
誰かがそう言っていた気がする。

私は友三の家に電話をかけてみた。


3コールほど鳴って、電話がつながる。

ぶっきらぼうな声が耳に懐かしく響いてきた。




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