いつもはバイクでの二十分は短く感じるが、今日だけは長く感じられた。
頼むから、間に合ってくれー
そう俺は心で叫んでいた。
「桜井、もっと飛ばせよ〜たのむから〜」
すると、桜井は
「これでも十分飛ばしてるんだよ〜これ以上とばすと、俺たちがお陀仏だよ〜」
と余裕に言っていた。
メーターは60キロを超えていて、二人乗りじゃ限界だと言うのだ。
一樹はせめてお別れの言葉を言いたくて、あせっていて、時が止まればいいのにと思っていた。
香里、まだ死なないでくれよ〜
神に祈るような気持ちだった。
湖付近にくると、また深い霧が立ち込め、前方五メートルも見えない、ゆっくりと走るしかないのだ、しかもバイクでは、かなり視界はさえぎられている。
それは飛ばしたくても、飛ばしたら山に吸い込まれそうな感じがしていた。