天使のすむ湖87

雪美  2006-10-31投稿
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 湖につくと、バイクを駆け下り、無我夢中で香里の部屋に走った。

しかし、ベットのそばには、キヨさんがたっていて、涙声で
「一樹様がお出かけになってしばらくして、お亡くなりになりました。」
といった。
「ウソだ、待ってると笑ったんだ、ウソだよなー香里、目を開けてくれよ、俺だよ、一樹だよー式辞、立派にやり終えてすぐ来たんだ。なのに・・・・」
一樹はまだ暖かさのわずかに残る遺体に、しがみついて泣き崩れた。まだ眠っているような穏やかな死に顔だった。
「せめて、別れの言葉を言いたかったし、看取ると約束したのに、間に合わなかったなんて・・・」
言葉に出来ない、別れの瞬間だった。
こんなにも、別れはあっけないものなのだろうか?ただ悲しみにくれて、恋人の死を受け入れられないでいた。
香里はいつも自分のことよりも、人のことを気遣う優しい人だった。
今朝の言葉も香里なりの優しさだったのかもしれない・・・・・
もうあの笑顔に、出会えないのだろうか?せめて死に際にそばにいたかったのに・・・
後悔ばかりが、後から後からでて、涙になきぬれていた。

せめてさよならできたら、こんなに哀しい涙にはならなかっただろう。
「ごめんよ香里、ひとりにして、俺は約束したのにダメな奴だよな・・・」
そう一樹が言うと、桜井も後ろで涙を流していた。
「香里さんは、お前に行ってくれと言ったんだから、それでよかったんだよ。そんなに自分を責めんなよ〜」
肩に手を置いたが、振り払い
「悪いけど、香里と二人にしてほしいんだ、ごめん、桜井、キヨさんも・・・」
そう言うと、二人は静かに部屋を後にした。
ただ涙が後から押し寄せて、深い悲しみに沈んでいた。

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