ぶつかった人物は、女の人で、いきなりこう言った。
「あんた、今日から入ってくれるっていう新入りかい?あたしは、松下響っていうんだ。よろしくな」
そう言って、返事もしていない方弘に手を突き出してきた。
「握手だ。今日から頑張って仕事をしてくれ」
方弘は、突き出された手を握った。響は、「じゃ、こっちへ来てくれ」と言ってスーパーの裏口へ案内してくれた。
裏口は、立ち尽くしていた場所から距離があり、その間にいろいろと質問された。
「そういや、名前聞いてなかったね。何て言うんだい?」
「方弘です。かたは方と言う字で、ひろは弘と言う字です」
「方弘か。あたしは人の名前がなかなか覚えられないんでね、この先間違ってしまうかもしれないけど、その時は許してくれよ」
響はそう言って笑った。方弘は、響の事をまだ全く知らないがいい人だとは分かった。
他にも、どこに住んでいるのかとか、バイトは初めてかとか、いろいろ聞いてきた。そうしている間に、裏口に着いた。
「あたしは、このスーパーの店長代理みたいなことをしているんだよ。時給は、そんなに出せないけれど、働いている人はみんないい人だからすぐ慣れるさ。で、方弘には何をしてもらうかって言うと、棚入れだ」続