香里が亡くなってから、俺には全てが色あせて見えて、あの日からずっと、哀しみを知るかのように、春のしとしと雨が降り続いていた。
肌寒さが身にしみて、また涙が出てきてい
た。さよならを言えなかった事と、そばにいてやれなかった悔しさで、とめどなく涙は流れて、キヨさんや桜井や岬が心配するのも耳に入らないほどだった。
喪に服すために、洋服はいつも黒を身につけていた。
キヨさんの作る食事もろくに喉を通らない、唯一すこしコーヒーや紅茶を口にする程度だった。
そんな日々が続いて、二週間も気づけばたっていた。
いよいよ、桜井は東京に上京するあいさつにきたが、冷たくさめた対応しか出来なかった。
岬は、心配して毎日来てくれたが、それさえも遠くの出来事に思えてならなかった。
大学の入学準備の時だけは、母に呼び出されて、引きずるように、何とかいくだけになっていた。
それ以外は、香里の匂いのする部屋にこもる生活が続いていた。
香里が見たら、なんていうのだろう・・・
そんなくだらないことを、ぼんやりと考えるようになっていた。