私は思わず瞠目した。彼は別れ話をするために私を呼び出したはずなのに、なぜ指輪なんかを用意していたのか…?
疑問に突き動かされるまま、私は指輪と一緒に入っていたメモを手に取り、一字一句を噛み締めるようにゆっくりと読んだ。
そこには…全ての謎を解く言葉が記されていた。今は亡き彼の、ヘタクソな…でもどことなく温かい字で。
『ハッピーバースディ優香里。それから…ハッピー(?)エイプリルフール!俺の嘘にうまく騙されたかな?でも、これは嘘じゃないよ。…優香里、僕と結婚してください。 誰よりも君を愛す、涼介より』
私はそれを幾度も読んで、読みながら泣き崩れた。悲しさと、悔しさと、嬉しさがドロドロに入り混じった感情に、押し潰されそうだった。
そして私は、メモを握り締めたまま叫んだ。顔を涙でグチャグチャにして、腹の底から亡き彼に向かって叫んだ。
「嘘つき…ッ!結局…別れることになったじゃん…!涼介の嘘つきィ…ッ!…どうして…ッどうして一緒に連れてってくれなかったのよォォォッッ!!!!独りぼっちなんて嫌ァァァァァッ…───!!!」
そして私はそのまま意識を失ったらしく、病院のベッドで気付いたときにはもう夜だった。
ボンヤリした意識のなか、点滴の落滴を見ながら、私はまた涙を流した。