毎日同じことの繰り返し、つまり平穏の日々を送っている。普通の人からするとこんな毎日つまらないのかもしれない。20代の女性なんて華盛り、合コンしたり、彼氏とデートしたり、そんなのがないとつまらないのかもしれない。けれど、私にとってはこんな平凡で何もない毎日が嬉しくてたまらない。合コンなんてしなくていい、彼氏なんていらない、週末に何も予定が入ってなくてもいい。平凡な毎日が保障されているだけでいいのである。
ちょうど3ヶ月前、自宅の電話がなった。今年、大学を卒業した田丸千鶴は受話器を取った。千鶴は就職を機に一人暮らしをしようかとも考えたが、実家から通う方が何かと便利であることから、今もなお実家に住んでいる。
『こんにちわ。ご無沙汰しております。元下北高校の千鶴さんと同じクラスでした佐藤夕子です。千鶴さんはいらっしゃいますか?』
『...私ですが。』
『千鶴?私だよ。ゆっちん。』
『あぁ〜、ゆっちん?誰かわかんなかったよ。』
電話の相手は、千鶴が通っていた高校の3年生の頃、同じクラスだった佐藤夕子だった。
『あんね、11月か12月くらいにクラス会しようかと思って、電話したんだ。』
電話の用件は、今度あるクラス会の誘いの電話であった。
『そうだね。私は基本的にいつでもいいよ。』
千鶴にとって高校時代の思い出はいいものではない。何がというわけではないが、決して美しい思い出でなかった。