趣味は天体観測。何よりも星を見ることが好きだった。わたしの部屋の窓からは星がよく見えない。だから、屋根の上にのぼってひとりで星を眺めてた。
ある日の夜。今日はやけに冷え込んでて星たちは明るさを増していた。夜空に向かって手を伸ばせばもう掴めそう・・なんて思うくらい今日の空は大きかった。
「コツ・・コツ・・」
誰かの靴の音が聞こえた。ここは田舎だからあんまり人は通らないはずなのに・・。だからわたしは平気で屋根の上に上っていられたのだが・・。なんて考えているうちに、懐中電灯の光がこちらにあたった。
「あぶねぇぞ!」
男の人だ。やばい・・。わたしはすぐに窓から自分の部屋に入った。
「コツ・・コツ・・」
だんだん靴の音が離れていく。わたしは窓から身を乗り出していなくなったか確認した。どうやらもうどこかへ行ってしまったようだ。今日はもう寝よう。あれは誰だったのか気になりながら、布団に入り30分もすると寝てしまった。
わたしは名も知られていないような小さな中学校に通っている。クラスは2クラスぐらいしかなくて、田舎だったからほとんどが顔見知り。わたしは受験生で、この田舎中学ともやっとおさらばできるとちょっと喜んでいた。でもやっぱり勉強は好きじゃなかったから成績はまったく伸びず、先生には毎日お説教を食らっていた。仕方ないか・・もう10月だもんなぁ。
気が重くなりながらも、1時間目の理科が始まろうとしていた。そのとき、隣の席の愛華がこっそり話しかけてきた。
「ねぇ由依。隣のクラスに転校生来たの知ってる?」
「えっ!うそっ!」
この田舎に転校生なんて珍しい。いつもはこんな珍しい情報、すぐに広まるはずなのに・・。
「由依。昼休みに見に行ってみよっ!」
愛華は好奇心旺盛なその目を輝かせてわたしを誘った。わたしは別にその転校生とやらに興味はなかったが、彼女のその目を見ると、つい・・。
「・・うん」
としか、言えなかった。