『優香里、大事な話がある。メールに気付いたら駅前の喫茶店Jacks cafeに来て。』
それだけ打つと、俺は携帯の送信ボタンを押した。
準備は完璧だ。後は主役が来るのを待つのみ。
喫茶店の窓際の席に座り、外を眺めていると、しばらくして窓の向こうに恋人・優香里の姿が見えた。今日は何だか一段とお洒落をしているようだ。
(…ははぁ。今日はアイツの誕生日だから、密かに何かを期待してるな？…よし、期待に応えてやれるよう頑張りますか、俺！)
そして俺は、俺に気付いた優香里を窓越しに手招きし、店内に優香里を誘いこんだ。到着が遅れたことを気遣う優香里に、俺は普段通りの対応をし、そして計画を実行した。
期待からか、笑って「話ってなに？」と聞く優香里に、俺はなるべく深刻そうな顔をつくり、「今日で俺たち付き合って２年目のじゃん？こんな日に悪いけど…」と切り出した。
予想通り優香里は少し怯んだが、それでもまだ笑みを消さない。そして俺は無情にも、愛する彼女に向かって、実際には思ってもいない言葉を言ったんだ。
「俺たち…別れよう。」
すると優香里の顔から表情が消え、「頭冷やしてくる…」と言ってフラフラと立ち上がると、トイレに向かった。
俺はそれを絶好のチャンスだと思い、その隙に、予め店員に渡しておいた優香里へのプレゼントを料理と一緒に出してもらおうと、店員に声を掛けようとした。
まさに、その時だった。
突然甲高いブレーキ音が響いて、次に何かがぶつかる音と、ガラスが割れる音がして、そして…──霞む意識のなか気付けば、俺は車の下敷になっていた。
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