だけどなぜか、死んだはずの俺は、意識だけでこの世に存在していて、お陰で死んでからもずっと優香里のそばにいることが出来た。
でも…俺が死んでから、優香里はいつも泣いていた。病院のベッドで。通夜で。葬式で。そして普段の生活で。
それを見るたび俺は胸が締め付けられた。だけど、優香里が泣いていても、俺にはもうその涙を拭うことが出来ない。
…いや、優香里の涙の原因は俺だから、もし優香里に触れることが出来たとしても、俺にはもう優香里に触れる権利すらないのかもしれない…。
でも病院で優香里が、俺たちの子を身籠ったと知ったとき、俺は優香里の瞳に光が戻った気がした。俺が死んでから消えかけていた、『希望』という光が。
その後、お腹が膨れるに連れて、優香里の泣く回数はみるみる減っていった。唐突に涙を流すときもあったけど、そんなときは、小瓶に入れた俺の遺灰を見つめて、涙をとめようと頑張っていた。
俺はそんな優香里が愛しくてたまらなかった。意識だけの存在でいい、ずっとそばにいたかった。
…──だけど願いもむなしく、ある日突然、別れはやってきた。