「ロボットという可能性は今消えました。質量モニターで調べた超過質量は約60キログラム。あなたの身長は、見たところ170センチくらいだから、もしロボットなら重さはその倍以上あるはずです。ロボットなら、外見はどうでも内部は金属のはずだから……」 僕のつま先から頭の天辺まで、彼女の目がじわじわ視線を泳がせるのに約10秒かかった。一つうなずき、ひくついた笑顔を向ける彼女は最初思った通り若いようだ。
二十歳前に見える。
「僕が人間だと証明されたのはいい事だよね。ところで、僕はすごく空腹なんだけど、何かご馳走してくれないかな」
普通、相手に自分が人畜無害だとアピールしたい時どうするだろう。
僕の場合は、ちょっと卑屈な笑顔で、手になにも持っていないことを強調するように、手のひらをひらひらさせてみた。
「いいですけど、言いにくいんですけど、その前に着てるものをすべて脱いで、そこのダストシュート(ごみ箱)に捨ててください。今すぐ」
いったい何を言い出すんだろう。この船は出港して、まだ3日目だ。
彼女はたった二日セックスをしなかっただけで禁断症状が出るくらいのセックス中毒なのだろうか。見かけによらず?
僕が考えていると、彼女の光線銃が鈍く光って、そばの床が一瞬オレンジ色に変わった。靴のゴムがいやなにおいを発して溶け出した。
「すいません、急いでください」
「あちちち。やめてくれ。わかったから」
上着を脱いで、ズボンを下ろした。ポケットの中のわずかな貴重品を取り出そうとしたが、それも彼女に止められた。
下着姿になった僕に、彼女は追い討ちをかけてきた。
「全部って言ったでしょ。シャツとパンツもですよ」
ややヒステリックな口調で少女に見える乗組員が叫んだ。
しかしその声を聞いて、見つかってから続いていた僕の緊張がやんわりと溶け出した。「わかった。ほら、全部脱いだよ。これをごみ箱に捨てればいいんだね。そらよ」
素っ裸の僕を見たとたん、彼女はいやだあと言って、銃を持たないほうの手で赤らいだ顔を隠した。