おいおい、僕は悪者かもしれない密航者なんだぞ。そんなことじゃ襲われて、変なことされちゃうぞ。実際銃を奪おうと思えばできたと思うが、それはやめておいた。
彼女の様子を見てると、いつでも形勢逆転できる自信が湧いてきたし、まだこのままだと自分がどうなるのかもはっきりもしていない。たいした罪にならないのなら無理をすることもない。
ごみ箱に入れられた僕の衣類は、次の瞬間圧縮空気に流されて、澄み切ったガラスのような暗い宇宙のかなたに漂っていったはずだ。
あの中には無け無しの金を払って買った地球製の腕時計も入っていたのに……。
「とにかく今後の事を説明しますから、操縦室に来てください。乾燥食料しかないけど御馳走しますから」
彼女はそう言うと先に立って歩き出した。不注意なんてもんじゃない。
僕をなめてるのか、あるいは弱そうに見えるのは仮の姿で、実は空手のチャンピオンなのか、おそらくそのどちらかだろう。
僕は操縦室に行くまでにいくつかあった急な階段で、彼女のスカートの中に薄い布切れ一枚透してうごめく大臀筋をたっぷり鑑賞させてもらった。
パンツもはかない僕の股間の状況が一変したことは多分僕が健康な男だとの証明になるだけで、特に僕が変質者だということにはならないと思う。
そんな格好で宇宙船に乗ってるこの女が悪いんだ。
操縦室は思ったより狭かった。この貨物船を操縦するただ一人のパイロットが過不足なく行動できる最小限のスペースしかそこにはなかった。
「そこの椅子に座っててください。今コーヒーと乾燥食料を開けますから」
言いながら振り向いた彼女の口が大きく開いて、悲鳴と共になにか変な発音の言葉を発した。変態っとでも言ったのだろう。彼女の国の言葉で。
しかし銃をぶっ放すとまでは思っていなかったから、僕の横のドアが半分溶け落ち、側に赤い溶鉄の水溜りができた時はさすがにたまげた。
とっさに彼女の腰めがけてタックルする。