彼から電話が来ました。気の早い彼のことですから、土曜日の待ち合わせを決めるためなんでしょう。
「あ、唯?あのさ、明後日…。」
語尾を濁す声…。どうやら私の予想は外れたようです。
「俺、カレンダー見てなくてさ、その日駄目なんだ。理由は…わかるだろ?」
全身が重だるくなりました。彼はそれでも「お前もわかるだろう?」と言います。そうです。わかっています。でも言えませんでした。「その日にわざと当てたのよ」なんて。「私とあの人とどっちをとるか知りたかったのよ」なんて。
「ほんとにごめん。今度埋め合わせするから。」
「もういいの。」
私は声が落ち込んでいくのを隠し切れませんでした。だって1ヶ月前からこの日を楽しみに頑張ってきたのにあんまりです。私は彼を振りきるように「もういい」と言って電話を切りました。その後すぐに彼のナンバーがディスプレイで点滅しましたが…脱力のあまりとる気が起きませんでした。
翌日は、一日この事を考えていました。どうしてあの人を忘れられないんだろう。私の魅力がないから?ならどうして私と付き合ってるの?心の隙間を埋めたいから?女を抱きたいから?
答えが出ないくせに考え込んで堂々巡りになりました。その内…だんだんイライラしてきました。なんで私がこんな思いしなきゃいけないのよ!と。この日、私の中で彼は「悪者」になりました。
ピポパ……プルル…プルル…
「もしもし?」
かけたのは幼なじみの男の子でした。
「和人?私。」
「おー、唯か。久しぶりだな。どうした?なんかあった?」
「うん、和人…前に、私の事好きだって言ってくれたわよね。まだ…その気持ちある?」
どうやら「悪者」に成り下がったのは私だったみたいです