大統領は、さらに星間情報を制限し出し、圧政を敷くようになっていった。
反政府的言動をするものを暴力で封じ込めるようになるのにも、ほとんど時間はかからなかった。
何としても星間連盟の支部のある星まで行って、窮状を訴えるのが僕の使命なのだ。
僕をこの船に乗り込ませるのに、何人もの仲間が死んでいった。
めったに来ない貨物船に、可能性の低い密航という手段。今度うまく密航できるのは百年先かもしれない。これが最初で最後のチャンスなのだ。
「さっきは持ち物を捨てさせたりしてごめんなさい。星間運行規程の中に、密航者を見つけた時の対処法として、そうするように書いてあるんです。武装解除させる意味と、少しでも早く少しでも質量を減らすために」
武装解除は理解できる。
でも、二つ目の理由に引っかかった。
「貨物船は普通燃料をぎりぎりしか積まないんです。密航や乗っ取り、それに着陸時の万一の事故に備えるために」
「着陸時の事故っていうのはわかる。残りの燃料が多かったら、爆発しやすいだろうからね、でも密航を防ぐことになるのかな」
「自分が密航するほどの燃料も積んでいないとみんなが知っていれば、誰も密航しようとはしないはずでしょ。サイラスではもともと禁止されてるから星間運行規程を勉強することも無かったかもしれないけど」
「馬鹿にしちゃいけないよ。そのくらいはわかってる。でも、たったの60キロだ。そのくらいの超過は許容範囲のはずだよ。そうでもないと予想外の小惑星が在った場合、針路変更もできないじゃないか」
「やはりサイラスは遅れていますね。今のレーダーは10年前と比べてもはるかに優秀になっていて、最初に立てたプログラムから0.01パーセント以上軌跡がずれることはありえないくらいなんです。つまり許容範囲は限りなくゼロに近いんです」
僕の目を見つめるサインの瞳の青が、一瞬赤く見えてぞくりときた。
「そうすると……どうなるのかな。僕は」
さっきまで強い立場だったことも忘れて、こわごわと聞くと、
「星間運行規程では、密航者は速やかに船外に退去させること、となっています」
本を読むようなサインの言葉が返ってきた。