「君は本当に操縦士なのかい?」
単刀直入に聞いてみた。
僕の予想が正しければ、サインは正直に答えるはずだ。
「私は自分が操縦士だなんて言った覚えはありませんよ」
サインの表情は少し変だった。額からは汗が流れてる。
「君はロボットなんじゃないのか?」
荷室にあった空き箱を僕は思い出していた。
「その質問には答えられません。その質問には……」
胸を隠していた手で頭を抱えてサインが苦しみ出した。
隠れていた乳房が現れて艶のあるピンクの乳首が震えた。
「この船はもともと無人船だったんだな。出港後、船のコンピューターが、密航者を発見したけど、コンピュータには手足が無い。だから積荷だった君を無線で起こして、操縦士の代わりをさせることにしたんだ。僕が寝てる間に木箱を抜け出た君は、船のコンピューターに言われるままにこれまで行動してきた。そうなんだろ」
サインは相変わらずいやいやをするように首を振っている。
「でも不思議だな。僕が寝てるうちにひっ捕まえておっぽり出してしまえば簡単に問題は解決したはずなのに」
「駄目です。ロボットは人間に危害を加えてはいけないんです」
なにかを吹っ切ったようにサインは叫び、そしてやっと少しだけ落ち着きを取り戻した。 ゆれていた天秤が片方にちょっとだけ重い錘を載せられたようにも見えた。
「ちぇ、気づきやがったか。仕方ないかねえ。所詮ダッチワイフだからな。その女は」
声が部屋の中に反響した。船のコンピューターの声に違いない。
「やっと黒幕のお出ましか。おまえがサインに命令を与えていたんだな」
「まあそんなところだ。その女が船長でないのは事実だが、それでどうなる? この船が重量オーバーで加速が足りないのは本当だぞ。おまえには出ていってもらわなければならない。法律で決まってるんだからおまえも諦めるんだな」
確かに、サインがロボットだったとしても何がどうなるわけでもないのだ。
いや、待てよ。