情事が終わるとともに、私は少しだけ冷静になれました。
「そろそろ何があったのか話してくれてもいいんじゃないか?」
和人は自分が「彼の代わり」ということをすでに知っているようでした。
「ごめん…もう少し待って。」
私が言葉に詰まるのに、和人は「後からちゃんと話せよ?」と言うだけで追求してきませんでした。そんな和人の優しさと、自分自身の勝手さに我慢ができなくなった私は、すべて正直に話してしまいました。彼があの人のために一日あける。それは仕方ないと思うけれど私には耐えがたかったこと。だから私は和人と浮気したのだということ。後悔はないけど和人に申し訳ないと思っていること。全部。
「そういう文句は…ハッキリ彼氏に言ってやんなきゃわかんないんじゃないか?おまえ溜め込みすぎだよ。」
和人は…そっと抱きしめてくれて、ぽつりと「何で俺を好きになんなかったんだろうな」とつぶやいていました。
日も暮れた頃、私達はラブホを出ました。和人は急ぎの用事ができたらしく、私はすぐに車から降りました。その時後ろから来た車にぶつかりそうになりました。
「今日はホントにごめん…こんなことに付き合わせて。」
「いや…別に悪くはないけど…」
と、いたずらっぽく笑いましたが、和人の顔は一瞬で曇りました。目線は私の奥に向かっています。その顔が怖かったので、私も恐る恐る目線を追いました。すると、
「唯……。」
さっき私にぶつかりそうになった車が横付けしてこっちを見ていたのです。
「もしかして…噂の彼か?なんなら俺が一言…」
和人が降りようとしたので慌てて止めました。
「自分で話すから、先に行って。」
「大丈夫か?」
「うん…。ごめん。ありがとう。」
私は和人にそう言い聞かせて見送りました。そして、車から降りた彼に思い切って向き直りました。