永遠(とわ)の夢/全10話

朝倉令  2006-11-05投稿
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  遠くから呼ぶ声



 (またあの夢だ…)



 長くつややかな黒髪


 細造りの清楚な顔立ち


 柔らかな空気がふわりと その身を包み込んでいる





 『君、僕を呼んだ?』


 …わ……の事……


『何?よく聞こえない』



風に妨げられ、途切れがちに届く声に焦れた僕は、思わず大声で聞き返した。



 …とは、現世で……


『現世? 一体何の事だ、説明してくれ!』



その声が突風を巻き起こしたかの様に、彼女のはかなげな姿が急激に遠退いていった。






「おい、待て!」



ガバッと身を起こした時、正面にいた人物とまともに鉢合わせる形となる。



「びっくりしたあ〜…。

うなされてると思ったら、急に大声出して跳ね起きるんだもん…。 心臓に悪いよ慎司」


「ああ、ゴメン。 千尋を驚かすつもりはなかったんだけど、また…例の夢さ」


「え? それって…、

見覚えの無い美女があんたを呼ぶってヤツよね…?」


「いてててっ!何つねってんだよ、おい」

「…浮気者だから」

「違うだろ!やめろっつーの全く」



頬をプーッと膨らませ、すっかりご機嫌斜めになった大沢千尋に手を焼きながら、僕、青木慎司は寝汗で不快にベトつくTシャツを替えた。






「よ!青木。 久々に一杯どうよ?」


「剣崎、お前が一杯で済むってのか? このウワバミ野郎が」


「言ってくれるねえ。
ま、細っけえ事は気にしなさんな。 老け込むぞ」



同僚の剣崎均に引きずられるまま、夜の巷へと繰り出した。





「ママ、いつもの!」

「あら、均ちゃん。 いらっしゃい」



振り向いた彼女を見た瞬間背筋を衝撃が貫いていた。


「…………」

「ん? どうした青木。
顔色悪いけど」




「こんな事って……」



僕は、訝しむ剣崎をよそに、冷たい汗を額に浮かべながらその場に凍り付いていた。





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