とりあえず
家に帰ってきた那智。
「ただいまあー
お母さん?」
母美恵子は
しばらく悩んで言った。
「家で待機!」
「はあ?」
那智は意味が
分からなかった。
だって捜さなきゃ。
「何で捜すの
やめちゃうの?」
「…捜すより
こうしてた方が
早いのよ。」
(…?)
那智は
何で?
とか問い詰めることは
しなかった。
…何となく。
「ねえ
小さい頃のこと…
覚えてる?」
(思い出話かよ。)
「うん。
3歳まで東京に
住んでたよねー」
「でさあ
よっちゃんて
仲良しだった子…
覚えてる?」
「…んー
そういえば
居たねえー
懐かしいなあ♪」
「あんた
ファーストキス奪われた
って大騒ぎしてた
じゃない。」
「ああー
そうだっ
そんなようなこと
言ってた!」
(あんときは
びっくりしたなあー
………ん?)
「えっ!!
よっちゃん!?」
「やっと思い出した…
そう。あれが
友義くんだったのよ。」
「本当に!?
嘘だあー!
んー…
あれっ?
でも苗字って
吉田だったよ?」
「色んな理由が
あったんでしょ。」
「そっかあー…
よっちゃん
大変だったんだなあ…」
那智は母の言葉で
よっちゃんこと
友義のことを
思い出した。
でも
母はどんな気持ち
だったのだろう。
(お母さん…
ごめんね。)
心の中で謝る那智。
そして
友義の初恋の人…
那智の家で待機する
ことにした。
那智は
引越したけど
友義はきっと
いずれここに
辿り着くだろうと。
※10へ続く