ブラック―夜の叫びが始まりし時―

アサミ  2006-11-06投稿
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箜鋤は、驚いた様に黙り込み…しばらくの間じっとブラックの眼を見ていた。ブラックは静寂な空間の中に一人取り残されている気分で、早く箜鋤が何か発言してくれないかと思っていた…と、その時やっと箜鋤が口を開いた
「“古蘇の国”かの…さて、お主が行けるのかのぅ…」
ブラックは拳を固くして言った
「俺は力はあるぞ箜鋤さん」
箜鋤は冷たく言う…
「知恵は?優しさは?思いやりは?備わっているか?」
痛い所を突かれた…がブラックは負けじと叫ぶ…
「牙を思う気持ちはある!牙の為に闘う気持ちもある!牙を生き返らせたい気持ちは誰にも負けてない。俺は牙を生き返らせたいだけなんだ!!だから知恵なんて要らねぇんだ…牙だけを思っているから…その為に…“古蘇の国”に行くんだ…頼むから…分かってくれよ!!!」
箜鋤は考えた。確かにブラックには力が備わっているし、牙の事を誰よりも思っている。その、牙を生き返らせたい、という気持ちが全身から湧き出ているのも感じとれる…。がそれだけじゃ…アソコには行けない。多くの者が忠告を無視して大切な者の為に、出掛けて行った…が皆帰って来なかった。ブラックも多分…無理
「ブラック殿。今まで“古蘇の国”に行って帰って来た者は居らんのだよ。だからのぅブラック殿、諦めた方がお主の為…」
箜鋤は途中で思わず言葉を切った。ブラックの全身から湧き出ていた、牙を思う気持ちがますます強くなっていたから…箜鋤は思った。ソコまで牙の事を思っているコヤツには、もうワシの言葉は無力じゃな…
「…良いじゃろ。お主の好きな様にせぃっ!その代わり、生きて牙殿を連れて帰ってこいブラックよ!分かったかのぅ…」
ブラックは笑って言った…
「おいおい。何を当たり前の事、言ってんだよ!箜鋤さん…二人で帰って来るに決まってんじゃんか。」

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