仮装現実 ー第2回ー

眠兎  2006-11-06投稿
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 ー 第 2 回 ー



 インターネット生活を楽しむ中で、「私は某大学の園芸科に所属している学生です」という書き込みを見つけた。

書き込みと一緒に、観察中の植物やキャンパスの様子を写した写真も掲載されていた。

季節の草花も素敵だったが、中学校しか出ていない私には大学の様子やキャンパスの風景の方が魅力的だった。

 掲示板の中で会話をする内に、学生さんから「メル友になりませんか」とお誘いを受けた。

その頃の私はネットを初めて1年以上が過ぎ、もうすっかりベテランだと自信過剰になっていた。

だから何のためらいも無く、疑いも無く、私は申し出を受けた。

また私の大好きな「たんぽぽ」をハンドルネームに使っている所にも親近感を覚えた。

こうして、私こと「銀子」と、「たんぽぽ」さんとのやり取りが始まった。



 いざ、たんぽぽさんとアドレスを交換したものの、始めの内は当たり障りの無い、園芸関係の話題が続いた。

でもそうこうしている内に次第に打ち解けてきて、たんぽぽさんは学校での行事の事や普段あった事など、何でも話してくれるようになった。

そうなると、私には困った事が出てきた。

たんぽぽさんは多分、10代後半か20代前半の男の子であろう事が文面から感じ取れた。

さらに。

ネット上の「銀子」も現実世界では女学生である、とたんぽぽさんは勘違いしているらしい様子も伝わってきた。

だが現実の私には孫もいるし、例えそうでなくとも年齢的には「おばあさん」である。

音楽の趣味も違えば食べる物だって、やっぱり肉料理よりも魚料理を好む。

私は「銀子」の「女学生説」の件について特に肯定したような覚えは無いが、かと言ってあえて否定しようともしなかった。

ましてや「実は私はおばあさんで、孫もいるんです」などとはクチが裂けても言えなかった。

言ってしまえば、今のこの関係が壊れてしまいそうで恐かった……。



 い つ し か 、私 は た ん ぽ ぽ さ ん に 対 し て 、メ ル 友「 以 上 」の 感 情 を 抱 く よ う に な っ て い た … … 。



 ー つ づ く ー

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