昼休みに学校を抜け出す。
進学校の二年生ともなれば、まわりはすでに受験勉強に必死だ。放課後は大多数の生徒が塾や予備校へ通う。
そんな中、たいした勉強もせずに成績が常にトップの淳一が、学校を抜け出すのは一度や二度ではなかった。
成績優秀な淳一を学校側は責めようとしない。
「はぁ…」溜め息をひとつ。『淳君はどこ行ったんだろ…』
去年まで女子大生。猪狩は教育の、理想と現実のギャップに戸惑っていた。
川にはおたまじゃくや小魚が泳いでいた。太陽に雲が掛かることはなく、強い風が気持ち良い。
淳一は、川の流れをずっと見つめていた。
桜の枝は 緑に包まれた
つづく