「おい青木、…何だよ、今にも死にそうな顔して」
「均ちゃん、その方心臓でも悪いんじゃないの?
顔色が普通じゃないし」
「君は、…何物だ?
なぜ僕の夢に……」
「え、夢…?」
「答えろ!!」
「ば、馬鹿!
何するんだお前!」
理性も何もあったものではない。
僕はいきなりママに掴み掛かり、喉を絞めた…らしい。
「らしい」とは妙な事を言う様だが、いっとき記憶に空白が生じていたのだ。
“バチンッ”とまともに殴られた瞬間に意識が戻り、時を置いて再び記憶は闇の底へと沈んでいった。
「起きてる?ねぇ」
「…ここは」
「私の自宅。 均ちゃん、怒って帰っちゃったわ。
あのね、順を追って説明するから今度は首を絞めたりしないでよ?」
そう釘を刺した後、さも可笑しそうにくつくつ笑っていた彼女だが、首に巻かれた真新しい包帯が痛々しい印象を与えた。
「まさか、……怪我させたのか?」
「過ぎた事はいいの。
それより慎二さん、ひどい有様ねぇ…」
差し出された鏡に写ったのは、鼻血に塗れ、ボコボコに腫れたご面相である。
「確かにこれは…負けたってのがアリアリだよな」
「もう、落ち着いた様ね。
ふふ、あなたの名誉の為に言っておくと、先に伸びたのは均ちゃんよ」
「え!じゃ、誰が僕を止めたんだ」
「あ・た・し。 後ろからこっそりスタンガンで、ね♪」
ひとしきり笑った後、ようやく説明に入った。
やはり彼女は、僕と同じ夢を共有していたのである。
「…で、あの時私が言おうとしたのはね……。
ちょっと、…そんなにジーッと見つめられたら言いづらいじゃないの」
「何だよ、勿体ぶらずに早く教えてくれ」
「だって、その、…内容が、ねぇ……」
彼女はいったん目線を下げ、こちらをチラッと見上げながら恥じらいを見せた。
元より、こちらには何の事やらサッパリ分からない。