満たされない訳

トウ  2006-11-07投稿
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なんだろう。
この痛いような、苦しいような気持ちは。

「喰っちゃったの?」
「ンな言い方すんなや。喰ったけど」
「あぁあ…」

昨日の晩、年下の女の子を抱いた。可愛いなって思ったし、相手もその気っぽかったし、お互い酔ってたし。
慣れてた。結構遊んでる子だったんだろう。その方がいい。変に本気になられても対処に困る。

「いい加減女遊びやめろよ」
「関係ないでしょーが」
「アンタはさ、」

相手が言いかけたところで、ペタペタという足音が聞こえた。
自然と会話が途切れる。

「おはようございます」
「っ……おはよう…」
「おはよう」

ザワリ、ザワリと
何かがくすぶるような。

「どうかしたんですか?」
「ん…?や、別に…?」
「そうですか?」

彼女は不思議そうな顔をしながらも、俺達の横を歩いて行った。

「………」
「………」

何故かしばしの沈黙。ごまかすように、煙草を取り出す。
……何を?

「………何」

耐え切れなくなって、こちらから尋ねる。
無言の視線がやたら冷たく感じる。

「………アンタさ」

何となく、予想がついてた台詞。

「あの子好きなんだろ」

彼女はどちらかといえば、無表情でぼんやりしてる事の方が多い子だ。
それでも、話しかけるとふわっと笑って。くだらないギャグでも、笑って。
あぁ好きなのかもって、いつから思ったんだろう。

「あぁ……罪悪感」
「は?」

くだらない事に気付く。あの痛いような、苦しいような気持ちの名前。
馬鹿みたいだ。あの子は俺のものなんかじゃないのに。まるで彼女を裏切ったような、そんな気持ちになったんだ。

「……うん、好き」
「………」
「俺…あの子が好きだわ」
だからか。
誰を抱いても満足しなかった。身体は満たされも、心が満たされてない感じ。
当たり前だ。だってそれは、俺が本当に望んでる子じゃないんだから。

「……ねぇ」
「何」
「あの子とシたい」

蹴られた。思いっきり。

「ったいな!!」
「馬鹿」

年下にこんな冷めた声で馬鹿って言われる切なさ。色々と情けなくて、いい歳して泣きそうになった。

好きだから、欲しいとか、思うじゃん。
俺のものになってくれたらとか、俺の事好きになってくれたら、とか。
誰といても、何処にいても思ってしまうんだ。

「じゃあチュウしたい」
「死ね」




満たされない訳.

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