なんだろう。
この痛いような、苦しいような気持ちは。
「喰っちゃったの?」
「ンな言い方すんなや。喰ったけど」
「あぁあ…」
昨日の晩、年下の女の子を抱いた。可愛いなって思ったし、相手もその気っぽかったし、お互い酔ってたし。
慣れてた。結構遊んでる子だったんだろう。その方がいい。変に本気になられても対処に困る。
「いい加減女遊びやめろよ」
「関係ないでしょーが」
「アンタはさ、」
相手が言いかけたところで、ペタペタという足音が聞こえた。
自然と会話が途切れる。
「おはようございます」
「っ……おはよう…」
「おはよう」
ザワリ、ザワリと
何かがくすぶるような。
「どうかしたんですか?」
「ん…?や、別に…?」
「そうですか?」
彼女は不思議そうな顔をしながらも、俺達の横を歩いて行った。
「………」
「………」
何故かしばしの沈黙。ごまかすように、煙草を取り出す。
……何を?
「………何」
耐え切れなくなって、こちらから尋ねる。
無言の視線がやたら冷たく感じる。
「………アンタさ」
何となく、予想がついてた台詞。
「あの子好きなんだろ」
彼女はどちらかといえば、無表情でぼんやりしてる事の方が多い子だ。
それでも、話しかけるとふわっと笑って。くだらないギャグでも、笑って。
あぁ好きなのかもって、いつから思ったんだろう。
「あぁ……罪悪感」
「は?」
くだらない事に気付く。あの痛いような、苦しいような気持ちの名前。
馬鹿みたいだ。あの子は俺のものなんかじゃないのに。まるで彼女を裏切ったような、そんな気持ちになったんだ。
「……うん、好き」
「………」
「俺…あの子が好きだわ」
だからか。
誰を抱いても満足しなかった。身体は満たされも、心が満たされてない感じ。
当たり前だ。だってそれは、俺が本当に望んでる子じゃないんだから。
「……ねぇ」
「何」
「あの子とシたい」
蹴られた。思いっきり。
「ったいな!!」
「馬鹿」
年下にこんな冷めた声で馬鹿って言われる切なさ。色々と情けなくて、いい歳して泣きそうになった。
好きだから、欲しいとか、思うじゃん。
俺のものになってくれたらとか、俺の事好きになってくれたら、とか。
誰といても、何処にいても思ってしまうんだ。
「じゃあチュウしたい」
「死ね」
満たされない訳.