香里の好きだったブルーローズをお墓に生けながら、桜井は
「お前ブルーローズの花言葉知ってるか?」
と聞いてきた。
「いや、知らないなー」
と俺が答えると
「神の祝福、って意味があるんだ、香里さんらしいよな。優しい人だったな、最後までお前を気遣って、卒業式にも出てといったんじゃないかと思うんだ。」
「俺もそう思うんだ、自分だってしんどかっただろうに・・・」
そんなことを話しながら、別荘のドアを開けると、そこには、満面の笑みで、輝くばかりの光を放つ香里が、白い衣装に、白い羽をつけて、立っていた。
「お帰りなさい、二人とも、ステキな男性になったわね。」
出迎えてくれた。
「香里・・・」
すぐに消えてしまったが、確かに香里だった。
「桜井、今の見たよな・・・」
「ああ、香里さんだった。」
あの神秘の扉のことは、話さなかったが、卒業式を亡くなってから香里が見ていたと、話してくれたことを、桜井には話した。
「そうか、それならいいんだ、お前が間に合わなかったこと気にしてるんじゃないかと、ずっと気がかりだったんだ。」
桜井は引っ掛かりが取れたように、肩をなでおろした。
「俺たち、少しは香里に認めてもらえるような大人の男になれたかな?」
と俺が聞くと
「あの香里さんの笑顔が、認めてくれた証拠じゃないのかー」
「そっかーこれからも頑張らないとな〜」
そういって、二人でリビングの香里の描いた肖像画を見ていた。
香里のくれた肖像画、命を削ってまで完成させてくれたこの絵も、首にかかるクロスも、一つも無駄なプレゼントなどなかった。まるでそれは、人生には無駄なことはないのだ、その人生の中から何かを学び取り、人生の糧にしなさいと言われている気がした。
本物の愛とは、与える愛の別名なりと、香里が教えてくれた、そのことを忘れないために、毎年俺は、墓参りを続けるだろう・・・本物の天使に俺は出会ったのだから・・・