宇宙戦隊・26

豆宮  2006-11-09投稿
閲覧数[423] 良い投票[0] 悪い投票[0]

急に飛び出したコウを見て、テシはようやく我にかえった。
「逃げるのか!卑怯者!」
「うるせぇ!」
飛び方をよく知らない上に、片翼であるせいで非常に飛びにくい。しかし何とかしてコウは液の噴射口の真正面に辿り着いた。噴射口は先程に見た目から推察した通り、あまり大きくない。


…自分が早いか、液の方が早いか…


コウは大きく息を吸うと、意を決して素早くそこに自らの腕を突っ込んだ。

「なっ…」
「今だテチ!撃て!早くしないと振り払われる…!!」
丁度、コウが腕を突っ込んだタイミングと毒ガスの噴射されるタイミングがほぼ同時であったのだろうか。噴射口からわずかに毒ガスが漏れていた。喉が熱くなるような感覚に襲われ、思わず咳き込む。
「そんな…嫌だっ!今撃ったらコウが…」
「俺は半有機質ってやつだから…ちょっとやそっとじゃ死なねえよ!撃てーーー!!」
弱っている液は、突如入り込んできた異物を押しだそうと今まで以上に大きくうねり出す。コウは振り払われてたまるかと必死に液にしがみついて、腕を更に奥へと突っ込んだ。
「貸せ!テチ!!」
戸惑うテチから電気砲を奪い、テシは電気砲を直接液に撃ち込んだ。
真っ白な閃光が辺りを包むと、液は先程よりも大きな音をたて、蒸発するように大量の湯気と共に姿を消した。今度こそ完全に破壊されたのだ。
その衝撃でコウは吹き飛ばされ、ミジハの茂る地面へと叩きつけられた。



「コウーー!!」
テシとテチは倒れているコウに走り寄った。
「死なないでよコウー!」
「コウ殿!起きろ!おい!」
何度揺さぶってもコウはピクリともしない。
「コウ!目を開けてよコウ〜!」
二人がどれだけ叫んでも、コウは返事をしなかった。
「うわぁぁぁん!コウが死んじゃったぁぁ!!!」
「コウ殿ぉぉぉぉ!!!!」
目を開けないコウを、テシは思いきり殴った。

「…っ痛ぇよデブ!!」
殴られた頬を押さえてコウが勢いよく目を覚ました。
「コウっ!!生きてたんだねー!」
「当たり前だ!そう簡単に死んでたまるか!」
喜びで跳び上がるテチ。一方テシは…

「なっ…デブだと!?おのれ誰に向かって…」
「何度でも言ってやるよ!デブデブデブ!!」
「ケンカはダメーー!」
仲裁に入るテチの声が響く。
その顔はミジハの水と嬉し涙で濡れていた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 豆宮 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ