そこにはなぜか真っ赤な風船があった。いや違う。何やら綿のような… 急に目の前の景色が変わり、驚いて飛び起きると、遠くの方に赤い一本の棒のようなものが見えた。いや違う、それは真っ赤な人だった。厳密に言えば、頭のてっぺんから爪先まで赤いシルクハット、スーツ、靴でめかしこんだ男だった。焦点があったところで、頭のなかは混乱しており、おったっていることしかできない。しかし男は容赦なくこちらへ近づいてきた。寝巻というなんとも無防備な私のもとに。杖を片手に、白い床に散らばる赤い綿玉を蹴ながら向かってくる。
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