名誉、名声、富、金、地位……。
バラ色の人生だ。こんな狭い貸家暮らしとは永遠に決別し、高級マンションないしはごう邸暮らしも夢ではない。夢だった外車も、ブランド物のバッグも、海外旅行も、エステも、宝石も……全て自分のものだ。
それに東大にさえ入れば医学部生のみならず、将来の官りょうや未来の社長、はたまた良家の子息等々は大ぜいいる。上手くいけば玉のこしだって夢じゃあない。
私は確実に自分の夢を現実にする自信がある。どんなに勉強やスポーツができ、頭の回転がはやい男でも、男は所詮男だ。
男は単純だ、と思う。簡単にちょっとしたテクニックで自分のトリコになるのだから。
そう考えていると、携帯電話のアラームが鳴った。それは某バンドグループの新曲だった。すぐに分かる彼にだけ設定しているリズミカルな音。
私自身はこの様なギターやドラムの音がガンガン鳴りひびくウルサイ曲は大嫌いなのだが、彼が好きなので仕方ない。
無論、こんなものにお金を払うのもバカらしいので甘えた口調で彼がダウンロードしたばかりのこの曲を私の携帯電話に送らせたのだ。
おかげで、無駄金を払わなくてすむし、彼も喜んでくれた。おまけにその次の日のデートでは何時もより高いレストランで食事をした。
無論彼のおごりで。