なんでも屋!…なんて看板を掲げてると、何だか見た目は格好いいが、特にどういうことを引き受けるというわけでもない、なんとも中途半端なサービス業だ。
私の名は和泉優。24歳で、かつて警視庁捜査一課で警部補をしたことがある。自慢はできなくとも笑われるような経歴ではないと思う。…多分。
とある事情でやめてしまったので、どうせなら昔の経験を生かせる仕事をしようと思い、なんでも屋を始めた。
しかし、そううまくいくはずもなく、スタッフもいない、というか雇えるほど稼げてすらいない。こんなことで大丈夫なのだろうか?と、考えているとコンコンとドアをたたく音がした。
「あっ!はいー」
ドアを開くと、そこにはお隣りの雪乃さんが立っていた。
彼女の名前は木之下雪乃。隣りに住んでいる人で、結構仲がいい。しかもすごい美人である。極上の絹のような白い肌、背中のあたりまである艶やかな黒髪、長いまつげ、高い鼻、少し茶色い澄んだ瞳。しかも料理まで上手ときている。才色兼備とは、まさに、彼女のためにあるようなものである。
「あっ、雪乃さん!どうしたんですか?」
「あの…依頼したいことがあるんだけど…」
なんと!
雪乃さんが依頼に来るなんて珍しい。大抵のことなら完璧にこなしてしまうのに、いったいどうしたんだろうか?
「とにかく中に入ってください。」
私は雪乃さんを応接室へうながした。
「なにか冷たい物でもいかがですか?」
「ありがとう。じゃあお茶を…」
私は、申し訳ないと思いながらも安いお茶を紙コップに淹れて、応接室まではこび雪乃さんにだした。
「すいません、こんな物しか出せなくて…」
「そんなことないわ。どうもありがとう」
雪乃さんは、常にお礼を欠かさない。今時こんな素敵な人、めったにいないよ、やっぱいい人だなぁ…なんてしみじみしてる場合じゃなかった!
「それで、どんな依頼なんですか?」
「友達のことでなんだけど…」
この依頼が、まさかデカいことになるなんて、その時の私には、知るよしもなかった…